夜空の日記
『夜空の日記』といっても天体観測をする日記ではありません。 漫画や小説(ラノベ)やアニメについて色々書いたり書かなかったり。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もしも長文キャラが学園ラノベになったら(5)
 学園の女子ソフトボール部は、決して強豪校とは言えなかった。
 部員こそベンチ入り可能人数17人に達する人数ではあるが、ソフトボール界から注目されるようなプレーヤーはいない。
 運が良ければ県予選三回戦進出、運が悪ければ初戦敗退。そんな、どこにでもあるような公立高校の運動部にありがちな成績を残すのが精一杯なのであった。
 そんな女子ソフトボール部のメンバーは、校庭の片隅でキャッチボールをして肩慣らしをしている真っ最中であった。
「あれ? 前橋は?」
 背中まで届く長い金髪をお団子にしてまとめてキャップの中にしまっている長身の女子が、2人1組になってキャッチボールをしている中の1人に尋ねた。
 尋ねられた少女は峰岸といい、この部のエースピッチャーの役割を与えられている。前橋というのは、彼女の女房役、つまりは正捕手のことだ。普段は峰岸のキャッチボールの相手は、この前橋という少女が務めることが多い。
「あー。なんか、風邪だってよ?」
「マジか。たるんでんなあ、アイツ」
「普通、風邪くらいひくわよ。みんながみんな、四谷さんみたいに常時健康体ってわけじゃないんだか、らっ!」
 喋りながら峰岸が投じたボールは、力強く相方のグラブに収まった。痛いよ峰岸さん、とボールを受けた少女――名は天野という――が軽く抗議をした。
 天野とのキャッチボールを続けながら、今度は峰岸が四谷と呼ばれた少女に問いかける。
「で? アンタは準備運動もしないで、1人で何を突っ立ってるわけ? 前橋さんがいないんなら、部員は偶数になるはずでしょ?」
「……ハブられた」
 あら?
 峰岸は、天野からの返球をうまくキャッチすることができずに、ポロリとボールをこぼしてしまった。
 足元に落ちたボールを拾いつつ周囲を見渡すと、なるほど確かに四谷の相手をしてくれそうな人はいなかった。隅っこの方で、3人で輪になってコソコソとキャッチボールをしている1年生部員たちが原因らしい。
「あの子たちったら……」
「いや、いいんだ」
 後輩指導! 叱りつけに行こうと爪先を1年生部員たちの方へと向けた峰岸だったが、その肩に手を置き、四谷が止める。
「気持ちは分かるんだ。身長170オーバーの、目付きも悪い巨女。しかも校則部則を無視した金髪ロングの先輩ともなりゃ、一緒にキャッチボールをしたくもなかろうさ」
 まぁ、確かに。と峰岸は口にこそ出さないものの、思う。自分が1年生の立場だったとしても、こんな先輩はちょっと嫌だ。しかもまだ季節は春。入ったばかりでは、“見かけほどには怖くはない”ということも、まだあまり伝わってはいないだろうし……。
 はあ、と峰岸は溜息をひとつ。
「原因分かってんなら、髪ちゃんとすりゃいいじゃない」
「黒髪ショートは嫌だッ! イモい!」
 そんなもんかねー。
 スカートは嫌だッ! 脚がスースーする! と年がら年中制服のスカートの下にジャージを穿いてる女の言い分だとは、とても思えなかった。
 結局四谷は独り寂しく壁投げを始めてしまい、しかしそれはそれで案外楽しそうだったため、峰岸は四谷に「私らと一緒にする? キャッチボール」と言う機会が失われてしまった。
 グラウンドには、峰岸さーん、早く投げてよーっ、という天野の声が響くばかり。

(おしまい)
スポンサーサイト




上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。