夜空の日記
『夜空の日記』といっても天体観測をする日記ではありません。 漫画や小説(ラノベ)やアニメについて色々書いたり書かなかったり。
みくるちゃん観察日記(2010.12.24)
12月24日。
つまりクリスマスイヴである。

正確にはクリスマスイヴとは24日夕方から25日明け方にかけてを言うのであるのだが、まぁ、細かい話は抜きである。
キリスト教徒の皆さんにとっては年に一度の聖なる日になるのであろうが、世界的に見ても珍しい無宗教がまかり通る国・日本においては、恋人が公然といちゃつく日という認識に相違ない。
……いや、別に恋人は年中いちゃついているような気もするが。
まぁ、いいだろう。
日本という宗教色の薄い島国において、めんどくさい祈りの儀はすっ飛ばし、とりあえず浮かれ騒いでいいという分けのわからんなりに楽しい日として成り立っているのである。
特に23‐25日は天皇誕生日、クリスマスイヴ、クリスマス、と、かつて幼い頃にはこの3日間の奇跡を美しいとすら思ったほどである。
ちなみに我が学校では、人によってはクリスマス、クリスマスイヴに補講が入っている人もいるようである。同情を禁じ得ない。

長ったらしい前置きはともかくとして、イエスの爆誕した日の前夜は“恋人たちのいちゃつく日”だという話である。
当然ながら俺とみくるちゃんも、イヴデートと洒落込んだ。

クリスマスイヴともなると、どこもそれなりに混んでいるものである。
俺とみくるちゃんは、近所の駅前にある複合商業施設オイオイ(またの名を天体戦士サンレッドの聖地、もしくはマルイ、あるいはノクティ)を訪れていた。

色気のない話で恐縮だが、まず最初に向かったのは文教堂……つまり書店である。
12月24日は中村光の漫画「聖☆おにいさん」の最新刊の発売日だったためだ(イエスの誕生日に発売とか、もはや狙っているとしか)。
オタクが書店に訪れた際の習性として、買うつもりはなくとも、何とはなしにラノベコーナーや漫画コーナーをチェックしてしまうのだが、みくるちゃんはニコニコ笑ったまま、それに付き合ってくれた。
ちなみにクリスマスプレゼントという形で、みくるちゃんが支払いをしてくれた。

持ちつ持たれつ、というわけではないだろうが、俺の買い物の後には、みくるちゃんの買い物が待ち受けていた。
みくるちゃんはやはり女の子なんだなと感じる部分の一つが、「買い物が好き」なところである。
買う気はなくとも、複合商業施設にはよく足を運んでいる。
常に金欠な我々はウィンドウショッピングで我慢。
俺ほどの妄想力なら、みくるちゃんが「あれ、どう思う?」と言って指で示したマネキンの着ている服を、脳内でみくるちゃんに着せて鑑賞し、「うん、似合うと思うな」などとコメントを残すことくらい、造作もないことなのである。

俺とみくるちゃんは、婦人服売り場へと向かう。
やはりというかなんというか、売り場のカップル率は高い。
あっちから「ねぇ、これ似合う?」こっちから「やっぱりこれもいいよねえ」。
ところにより、男性放置で、食い気味に店員さんと真剣に衣装を吟味する人も。

俺らはまぁ、普段のウィンドウショッピングとあまり変わらないような、普通のショッピングデートとなった。
ここでヴィトンの財布をサッと懐から取り出して「さぁ、なんでも買ってあげるよ」(←チラッと覗く手首にはロレックスの腕時計。着ているのはセリーヌのスーツ)と、みくるちゃんに言ってあげられたらカッコいいのだが、いかんせん苦学生の身。
みくるちゃんは気に入ったハンカチーフ(木綿の、ではない)を一枚手に取って、チラッと俺の方を見た。

「……」

お買い上げである。
みくるちゃんから俺には、「聖☆おにいさん」の最新刊が。
俺からみくるちゃんには、婦人服売り場最安値のハンカチーフが。
……あまりにも慎ましやかなプレゼント交換だが、当人らは案外これで満足してしまっているものなのだ。
大切なのは、それを相手が“くれた”という記憶なのであり、物品そのものの価値なんてどうでもいい。
あるいはそれは、俺たちが幼いからそう思っているだけなのかもしれないが……構うものか。
今を生きているのは、今の俺とみくるちゃんなのだから。
誰にも俺たちの関係に文句を言う筋合いはない。

その複合商業施設には、ア・ラ・カンパーニュという喫茶店がある。
まぁ、さすがにイヴなだけあって混んではいたのだが、入れないほどのものではなく、俺とみくるちゃんはそこで一服した。
(ちなみに高かった。コーヒーとケーキで1200円て、ドトールの倍はあるじゃなイカ。いや、ドトールと比べるから悪いのかもしれないが)

それからまたフラフラと別の階のフロアを眺め(例えば俺もみくるちゃんも家電には興味はないのだが、二人して並んで家電製品を眺めていると、「同棲もしくは結婚前に家電製品を下見に来ているカップルごっこ」に早変わりである)、地下の食料品売り場で夕飯を買い込み、帰還した。



夕飯には、みくるちゃん宅にお邪魔になる。
昼に買っておいたローストチキンを中心に、スープやサラダを二人で用意する。
みくるちゃん×料理というのは前々から説明している通り、やや不安の残る組み合わせではある。
しかし余計なアレンジを加えさせないように注意し、しっかりレシピを確認させながら作らせれば、まぁ、わりと悪くはないものが出来上がるのである。

そして飲み物として緑茶。
……クリスマスイヴにふさわしくない飲料であるということは、重々承知している。
しかし二人ともアルコールを苦手としているためにワインやシャンパンは飲めない。
そうなるとみくるちゃんの趣味の一つである「お茶」になってしまうのだ。
紅茶ならばまだ許容範囲内だろうが、残念ながらみくるちゃんのレパートリーには日本茶と中国茶しかないのだ。
というわけで和洋折衷なクリスマスイヴである。

なんとなくテレビでやっていた「マイケル・ジャクソン THIS IS IT 4時間スペシャル」を観ながら、夕食。
マイコーを観たり、別の話題で笑ったりしていたら、いつの間にか食べ終えていた。
美味しかった、と素直に言いたい。

食器を片した後はテレビを消して、適当に駄弁って過ごした。
やがてみくるちゃんは時計を見て言った。
「そろそろ、お風呂入ろうかな……」

俺がみくるちゃん宅に泊まることは、そんなに珍しいことではない。
みくるちゃん宅には俺の寝間着や歯ブラシが常備されており、その気になれば簡単に泊まることができる。
もちろん寝るのは別のベッドである(俺用の布団と毛布も常備してある)が。

お湯に入る順はみくるちゃん→俺という順番になっている。
家主を置いて先に、というわけにもいかないので、当然の処置である。



さて。

聖なる夜を迎えるにあたり、俺とみくるちゃんの間に、ある一つの想いがあった。

俺とみくるちゃんは付き合いはじめて長いが、肌を合わせた(よろしくやる。いいことをする。※類語辞典より)経験はない。
そうなった理由は一概には言えないようでシンプルな話であった。
要するに怖かったのだ。
きれいに付き合いを続けていたが故に、あまりにも生々しい肉体的接触を俺たちは嫌っていた。
……否、おそれていた。
「今はまだ期ではない」
そんな、理由にもなっていないような理由で、俺とみくるちゃんは肉体的接触を避けてきていた。
しかし……しかしである。
いつまでも立ち止まっているわけにはいかないのだ。

プラトニックラブがどうとか、そんな一昔前の理想論を唱えているわけじゃない。
つまり何が言いたいのかと言うと、だ。

俺とみくるちゃんは、今夜、一つに溶け合う(創聖のアクエリオン的には「あなたと合体したい」)。



……とかそんなことを回想する内に、みくるちゃんが風呂から出てきた。
風呂上がりの彼女の姿はこれまでに何度も見てきたが、ここまで扇情的に見えたことはない。

俺はみくるちゃんの後の湯に浸かりながら、考える。
(「みくるちゃんの浸かった……お湯!?」とか動揺してたのは昔の話だ)

この夜を迎えるにあたり、みくるちゃんの想いはどんなものなのか。
夜の接触において、女性の決意の重さは、男性のそれよりも何倍も重い。と、思う。
少なくとも、男が考えているほどに、これは気軽な行為じゃない。
たぶん、そんな簡単なものじゃない。
漫画やドラマとは違う重さは、そこに確かにあるのだ。

……いや、よそう。
考えたって分からない。
俺は女ではないし、そもそもみくるちゃんじゃない。

彼女の考えは、彼女にしか分からない。
ならば、勝手な予測で彼女の心を分かった気になろうというのは、それこそ、あまりにも失礼だ。

少し長めの湯に浸かり、何度も袖を通した青い寝間着を身にまとう。

リビングに向かうと、彼女はテレビをつけてマイケル・ジャクソンを観ていた。
「THIS IS IT」の時のマイケルは50歳だ。
だが彼はその年齢を感じさせないダンスで、俺たちを魅了する。
あれだけ歌って踊れる50歳を、俺は彼と郷ひろみ以外に知らない。
ダンスでなくとも、歌でなくとも、極められた技術を見せつけられると、人は感動する。

クリスマスイヴに。
確かにマイケル・ジャクソンは、そこに“居”た。

俺とみくるちゃんは、彼の美しいダンスに、勇気のようなものをもらった。
いつもは寝る時間が近づくと、みくるちゃんは俺の寝るための布団を用意する。

そして、

今日は、

用意されなかった。





さて。

この文章を書いている時点で、俺とみくるちゃんは「THIS IS IT」を現在進行形で観ているところだ。

ここまで読んでもらって本当にありがたいと思う。
俺はみくるちゃんを見た。
みくるちゃんは熱に浮かされたような、心ここにあらずといった様子でマイケルを見つめている。

俺とみくるちゃんは、今夜本当に一つになれるのか。
それは夜が来なければ分からないが、まぁ、きっとどうにかなる。
今までだってどうにかしてきたんだ。
今夜だって、いつか笑って振り返れる夜になる。いや、そんな夜にしようと思う。

「みくるちゃん」

俺が名を呼ぶと、みくるちゃんはチラリと視線をこちらへ寄越す。
眠たげな半眼で、まぶたが微かに赤らんでいる。
それからまばたきをひとつして、口角を小さく上げて微笑んだ。



今日の分の観察日記は、ひとまずここで終わりとなる。
この夜のことは、明日以降に報告するかもしれないし、しないかもしれない。

というか意外とこれ、書いてて恥ずかしいのだ。

夜のことを書くとなればそれなりにアレなシーンも出てくることになるだろうが……まぁ、元から大した需要のある日記でもない。
反響があればまた書くかもしれないし、興が乗らなければ書かないし。
そんな軽い感覚でいいんじゃないか、と思っている。

ではまた、機会があれば次のみくるちゃん観察日記で会おう。

すべての人たちに、愛に溢れた夜が訪れますように。
メリークリスマス。
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