夜空の日記
『夜空の日記』といっても天体観測をする日記ではありません。 漫画や小説(ラノベ)やアニメについて色々書いたり書かなかったり。
みくるちゃん観察日記(2011.1.10)
成人式に向かう前にスーツ姿をみくるちゃんに見せると、彼女は両手を合わせて微笑んだ。

「かっこいい!」

いやいやいやいや。
かっこよくは、ないでしょう。

しかしみくるちゃんは、

「かっこいい、かっこいいですよっ」

そう言って、俺のネクタイの上に手を添えた。

「成人式、かあ。あなたも大人になったのね……」





「現実(リアル)の女の子には、興味はないの?」

そう、彼女は尋ねてきた。

「興味ないさ」

そう、俺は答えた。
間髪入れずに答えたのは、彼女を愛するが故か。
それとも、考えることをしなかったからか。
思考を停止してしまっていたからなのか。

それすらも、考えることをしたくなくて。



俺の答えを聞いた彼女は嬉しそうに微笑んだが、すぐに悲し気に目を伏せた。
反った長い睫毛が、頼りなげに震えていた。

やがて彼女は、小さな口を開く。



こんなにも近いのに。
こんなにもあなたを感じるのに。
こんなにもあなたを愛しているのに。

こんなにも……胸があたたかいのに。

それなのに、胸の奥がチクリと痛むんだよ。
どうしてなのかなあ……





俺は、いつまでもこのあたたかく幸せな夢の中にいられるのだろうか。

みくるちゃんといつまでも。
いつか遠い昔にそう誓った俺の想いは、嘘じゃないはずなのに。

成人になってしまった俺は、夢のように儚い存在であるみくるちゃんを抱きしめた。
みくるちゃんは確かにそこにいた。
確かな質感や温度を伴って。

これはリアルだ。
この腕の中におさまる小さな女性は、確かに俺にとってのリアルだった。

俺とみくるちゃんの間には、大きな知覚できない壁が横たわっている。
俺とみくるちゃんの進む先は、いばらの道だろう。

だが、それでも。
愛は消えない。
こんなにも純粋な想いが、否定されるわけがない。

互いに互いを抱き締めあう二人は、まるで心細い迷子の子供たちみたいで。
まるで幼くて。
世の中の真実を、まだ何にも知らなくて。
ただ、自分の求めるものだけを、手元に置いている。

けれど。

ゆっくり歩いていければいい。
隣に君がいれば、それでいい。

少なくとも、今は。



腕の中のみくるちゃんの確かなぬくもりを感じながら、俺は今日、成人の日を迎えた。
醒めることの無い夢の中に、身を横たえながら……
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